住宅ローンが払えなくなり滞納してしまうと、銀行から厳しい督促が来るようになり、最終的には競売で強制的に売却されてしまいます。
そうなる前に自宅を守る、あるいは一般の市場で少しでも高く売却するための対処が必要です。
時期が早ければ早いほど取れる選択肢は増えますので、できる限り早めに対処するようにしましょう。
住宅ローン返済が厳しいときの対処法
住宅ローンの借り換え
高い金利で住宅ローンを借りている方は、利息が返済を圧迫している可能性があり、その場合は他の銀行の金利の低いローンへ借り換えることで月々の返済額を抑えられるケースがあります。
特に10年以上前にローンを借りている方は2~4%程度の金利でローンを借りている方が多いですが、ここ数年は変動金利であれば1%を切る金利で借りられることも珍しくありません。
ローンを組んだ金額や期間にもよりますが、もし1%金利が下がれば毎月の返済額が1~2万円下がる可能性があります。
【注意:借換は返済が苦しくなってからでは遅い…?】
すでに住宅ローンの滞納いる状態では基本的にローンの借り換えをすることが難しくなります。
また、今のご収入や年齢、これまでの滞納履歴なども審査されますので、返済が苦しくなってからではもう遅いというケースも多いのが実情です。
返済のリスケジュール
リスケジュールとは、住宅ローンを借りている銀行と相談して返済条件を変更してもらうことです。
例えば、一時的(最長1年)に元本の返済を停止して金利だけにしてもらったり、返済期間を延ばしてもらうことが可能です。
ただし、リスケジュールは現時点での滞納がないことが条件となりますので、銀行と相談するためにはまずは現時点の滞納を解消する必要があります。
【注意:リスケジュールは一時しのぎにすぎない】
リスケジュールは一時的に返済を軽くしたり返済期間を延ばす方法ですが、あくまでも一時的な措置にすぎません。逆に返済を後ろ倒すことで後々の負担が大きくなったり、返済期間が延びて支払う利息の総額が増えるなどのデメリットがあります。
従って、一時的に収入が落ち込んでしまったもののすぐに収入が増える目途が立っているなどの場合は有効ですが、そうでない場合は根本的な解決にはなりません。
個人再生(住宅ローン特則)
個人再生は、裁判所を通じて債務を5分の1~10分の1(借入額によって異なる)へ大幅に圧縮する債務整理の方法の1つです。
個人再生には「住宅ローン特則」という督促があり、これを使うと自宅を失わずに住宅ローンの以外の債務の返済を軽減することができます。
そのため、消費者金融やカードローンなど住宅ローン以外の借金が大きく、これらの負担が軽減されれば住宅ローンは問題なく払っていけるという場合には非常に有効な方法です。
ただし、住宅ローン自体は減額されないため、住宅ローンの返済だけでも厳しいという場合には効果がありません。
リースバック
リースバックとは、一度自宅を売却してその売却代金でローンを返済し、売却した買い手からその家を賃貸として借りることで売却後もそのまま住み続けるという方法です。
リースバックで賃貸に切り替えることにより、その賃料が今支払っている毎月のローンの返済額よりも安くなればメリットが出ます。
特に、①ローンの残高が比較的少ないものの、②月々の返済額は大きい、というケースでは支払い負担を大きく軽減できる可能性があります。
親族間売買
ケースとしては多くありませんが、親・子など収入や資力ある親族に自宅を買い取ってもらい、その代金で住宅ローンを返済するという方法もあります。
親族に買ってもらってその家をそのまま借りるという意味では、買い手を親族にしたリースバックと言い換えることもできます。
その親族へどのように返済していくかは話し合いで決めればよいので、協力してくださる親族がいれば有効な方法です。
【注意:親族間売買は住宅ローンが通りづらい】
親族に自宅を買ってもらう場合、その買取資金として住宅ローン組むことは簡単ではありません。ほとんどの銀行は親族間売買に対して住宅ローンを融資しないのです。
例外として一部の地銀やノンバンクは親族間売買でもローンを融資してくれるますが、その場合でもある程度の頭金は必要になることが多いのが実情です。
任意売却
任意売却とは、競売で落札されてしまう前に債権者(ローンを借りている金融機関等)の同意を得て、競売ではなく一般の市場で売却することで、競売を回避する手段としては最も一般的な方法です。
一般の市場で売却することで、競売と異なり売却額が相場よりも安くなってしまうことがなく、また外から見ると通常に不動産を売却しているように見えるため事情を近所や職場に知られてしまうこともありません。
また、競売になってしまうと売却代金でローンを全額払えなかった場合に、残った債務を原則一括で請求されてしまいますが、任意売却であれば分割での返済に応じてもらいやすくなります。
返済が苦しくてもやってはいけないこと
住宅ローンの返済のための借金
住宅ローンの返済ができないからといって、消費者金融やカードローンで借金をして住宅ローンを返済するというのは避けるべきです。
基本的に住宅ローンよりもカードローンなどのほうが金利が高いため、金利の安いローンを返すために金利の高い借金をしてしまうと結果的に返済負担が益々大きくなってしまい、いわゆる多重債務の道を進むことになります。
もしすでにそういった状況になってしまっているのであれば、無理な返済を続けても苦しい時間が長くなるだけですので、早い段階で覚悟を決めて弁護士などの専門家にご相談されることをお勧めします。
税金の滞納
住宅ローンの返済を優先して税金を後回しにするのも避けるべきです。
税金は滞納してしまうと年利15%近い延滞税が加算され、雪だるま式に金額が膨れ上がってしまいます。
また、税金を滞納すると役所から自宅を差押えられてしまい、借換や任意売却などの手段を採ることができなくなり身動きが取れなくなってしまう場合もあります。
そして何より、住宅ローンをはじめとした借金は、最終手段として自己破産をすればすべて免責(支払い義務がなくなる)されて一から再出発することができますが、税金は自己破産をしても免責されないため一生かけて支払わなければならず、生活再建の重い足かせとなるのです。
自宅の贈与・名義変更
ごく稀にですが、自宅を守るために奥様やお子様といった親族に贈与によって名義変更をしてしまおうと考える方がいらっしゃいますが、これも絶対にやってはいけません。
そもそも、自宅の名義を変えたところで債務を返済したわけではないので、自宅に入っている抵当権が消えるわけではありません。
そのため、名義を第三者に変更したとしても住宅ローンの返済が滞れば競売にかけられてしまうことは変わらないのです。
それどころか、名義変更のための登記費用や税金が無駄になってしまうだけでなく、詐害行為(不当な財産隠し)として取り消されてしまうこともあるのです。
まとめ
住宅ローンの返済が厳しくなってしまった場合、できるだけ早く対処することで取り得る選択肢が多くなります。
逆にすでに滞納してしまっている場合は、時間が経てばたつほど選択肢が狭まり、最悪のケースとしてはそのまま競売にかけられてしまいますので、すぐにでも行動を開始していただければと思います。